SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(ソリューション創出フェーズ)
コミュニティ防災人材育成システムの全国展開に向けた実証プロジェクト

研究概要

目指すべき姿(ビジョン)

大阪市住之江区役所と大阪市立大学都市防災教育研究センター(以下CERD)が協働して、住之江区域において、地縁型コミュニティだけでなく、中学生とその家族、集合住宅、中小企業コミュニティ、子育て等のテーマ型コミュニティといった多様なコミュニティの関係者に対して、ICTを活用した防災人材育成プログラムを提供し、効果的なコミュニティ防災人材育成システム・装置を構築する。

コミュニティ防災人材は、トップダウン型リーダーではなく、多様な立場を理解し、フラットな関係で触媒として多様なコミュニティをつなげ、相互交流・協働を促し、その結果として、ボトムアップ・ネットワーク構築型で地域の防災リテラシーとレジリエンスを高める者である。

このような人材育成とその循環によって非日常となる災害時対応だけでなく日常からの多様なコミュニティや地域コミュニティのつながりを再構築する。

育成された防災人材、大阪市の行政組織、NPOとの連携により大阪市他区で市外展開の視座を得、統合予定の大阪府立大学を含む公立大学防災センター等との連携により、大阪府域及び住之江区と類する属性の沿岸都市域へと実証展開を進める。


解決すべき社会課題

防災人材の担い手不足とコミュニティ間の連携
都市部で内湾・河口に面した低平地の大阪市住之江区は、水害を主とする災害対応が必要な地域である。区民の構成は多様性に富んでおり、地縁型コミュニティは充実するが、住民は単独・複数のテーマ型コミュニティに緩やかに属しており、地域への帰属意識の低下もみられる。高齢化が進む中、自助・共助による対応では、単一の災害はもとより、さらには感染症対応などの複合的状況下においては、特に防災人材の担い手不足が課題となっている。

同じく、現代の地域社会では既存の地縁型コミュニティの高齢化や住民参加率の低下、担い手不足など喫緊の課題に直面している。一方、集合住宅住民は住宅内では結束しコミュニティを形成し、地域に根付く中小企業もコミュニティを形成している。

このように、地域社会は従来の地縁型コミュニティに加え、集合住宅のコミュニティ、中小企業のコミュニティ、子育て等のテーマ型コミュニティといった多様なコミュニティで構成され、個人は緩やかに単独あるいは複数のコミュニティに属している状況である。しかし、それぞれのコミュニティへの帰属意識については個人差も大きく、従来の地縁型コミュニティに属さず、緩やかなつながりを求める個人が多い現状では、防災や現在のコロナ禍を始めとする諸課題に対して主体的に取り組む個人は限られている。その結果、防災人材となる担い手が不足し、各コミュニティが危機に直面した際の対応行動に課題が発生している。加えて、それぞれのコミュニティをつなげる防災人材が育っていないこと、コミュニティ同士の交流を促す仕組みが整っていないことから、地域に存在する多様なコミュニティ間の連携は不十分となっており、地域社会全体のレジリエンス向上を妨げる課題となっている。


課題解決の方法と目標

本プロジェクトでコミュニティ防災人材育成の受益者は、いずれの地域でも、地縁型コミュニティだけでなく、そこに居住する中学生とその保護者、集合住宅の住民や企業などで構成される多様なテーマ型コミュニティも含む地域のコミュニティ全体である。

これらのコミュニティのメンバーは、幅広い世代で、ジェンダーの偏りが少なく、コミュニティへの関与度も多様であり、それぞれの得意分野で、コミュニティ防災人材として寄与できる知識・技術を獲得し、多様なコミュニティ間の連携・協働を促す防災人材となることで、各コミュニティと地域全体の防災リテラシーとレジリエンスの向上を目指す。

コミュニティ防災人材育成システムの開発
CERDでは、2015年から中学生から高齢者を対象とした人材育成プログラムを、延べ1,890名を対象に実施してきた。防災にかかわる基礎知識に関しては各種講義、テキスト出版、動画教材を整備し、併せて防災士養成講座も提供してきた。対応訓練に関しては各種専門家による発災前、発災中、発災直後、避難生活までの実践的なプログラムを提供している。現段階ではこれらのコンテンツは、個別に実施可能なものではあるが、効果的に統合化された状況にはない。

本プロジェクトでは、これらを体系化してコミュニティ人材育成システムを構築する。構築するシステムでは、多数が容易にアクセスし共通知識を習得できるeラーニング化を進める。また、他地域展開においても各種コンテンツを使用しやすいように、オープンデジタル防災教育の基盤を整備する。eラーニングコンテンツはwithコロナ時代に対応したもので、接触型・対面型のワークショップ等の制約を克服するものである。

本プロジェクトでは基本的な防災人材育成コンテンツを集約しパッケージ化し、マニュアルを整備する。展開地域の特性に併せて、コンテンツを追加しやすいような防災教育の基盤を整備する。Learning Management Systemを基盤として人材育成システムを管理、運用し、まち歩き等ではオープンデータを活用したアプリケーションを使用する。

コミュニティ防災人材の育成
本プロジェクトで育成するコミュニティ防災人材の対象は、住民の中の多数派であり、行政との距離間は多様である。世代も幅広く、ジェンダーの偏りが少なく、コミュニティへの関与度も多様であり、本プロジェクトは防災人材のダイバーシティ推進を目指している。

従来、行政が関与してきた自治会を中心とする地縁型コミュニティのみへのアプローチではなく、多様なテーマ型コミュニティを巻き込んだアプローチによって、それらのコミュニティメンバーの中にコミュニティ防災人材を育成する。本プロジェクトでの主な対象者としては、中学生及び保護者、集合住宅、 企業、テーマ型の組織のメンバー等、既存の地縁主体のコミュニティとは関わりがやや希薄な市民を優先する。要支援者に直接的に関与する内容は先行する行政施策での取り組みを主体とし、本プロジェクトはそれらの支援者を対象とする。

コミュニティ防災人材のネットワーク化
これまでに育成してきた防災人材のグループに、本プロジェクトで育成されるコミュニティ防災人材が順次加わりながら、その拡大を進める。運用展開期間では、その人材活用を行い、現任訓練(OJT)での教育手法・ファシリテーション技術獲得の環境を提供する。防災人材を中心にして行政・大学・企業が協働できる体制を模索し、持続的な連携のあり方を探る。また、運用展開期間では住之江区にとどまらず、大阪市域や堺市、そして他府県にまで範囲拡大を行う中、育成されたコミュニティ防災人材が主体的活動へと移行できる実践の場を提供し、防災人材の機能的ネットワーク形成を進める。地域拡大とともに、そのネットワークは住之江区にとどまらず大阪市域・大阪府域そして日本各地におよぶものとする。このためにも、SNSを活用したネットワーク形成や遠隔的な会合イベント開催技術などをコミュニティ防災人材が獲得する必要がある。

 

 

優先するSDGsターゲット

JST -おしらせ -

2020年12月22日

【2015-2017年度】科学技術コミュニケーション推進事業 ネットワーク形成型 「公立大学防災センター連携による地区防災教室ネットワークの構築」

2018年03月27日

「コミュニティ防災の基本と実践」を出版しました

2016年11月16日

JSTサイエンスアゴラ2016にてキーノートセッションを開催しました


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