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「コミュニティと防災」質問への回答(第3回)

Q. 「地震予知」は現在ではどの程度可能なのか。
A. 東海圏・首都圏は重点的に地震の前兆をとらえようとする観測体制がかなり整備されています。しかし,全国を網羅して日本の地震の前兆をとらえる状況が十分に整っているわけではありません。このため,1か月後にあるいは1週間後にある場所で地震が起こるといった予報を出すことはできない状況です。東海圏などの重点観測地域では将来的にうまくいけば,何らかの前兆現象がとらえられるかもしれませんが,確実なことはわかりません。地震が起こって直後の警報としては,地震波のP波(最初の縦揺れに関わる地震波で伝播速度が速い)とS波(地震の主要な揺れ(横ゆれ)となる地震波で伝播速度がP波に比べて遅い)の伝播速度の違いを利用して,震源から遠方の地域にS波が到達するまでにインターネットなどを介して警報し,揺れが生じるまでに新幹線などを停止させる仕組みがすでに整っています。

Q. 一度,断層が生じた場所はずっと活断層のままなのか。
A. 現在,「活断層」とされている断層は,13万年前あるいは40万年前以降に活動し,将来にも活動して地震を発生させるとみられる断層のことをさします。内陸地震を引き起こす活断層は一般的に数百年〜数千年の活動間隔で地震を発生させています。このことから,現在活断層とされる断層は,皆さんが生きている間の近い将来の範囲では,活断層として位置づけておいてよいものです。しかし,何十万年,何十億年先のことを考えると,同じ断層が同じように活動するわけではなく,広域の地殻に働く力も変化してゆきますので,活動しなくなるものもあるでしょう。

Q. 斜面災害を事前に予知することはできるのでしょうか。
A. 斜面災害は多くの場合,多量の降雨や春の雪解け水が地下に浸みこんで発生します。斜面が緩慢に滑るものを「地すべり」と呼びますが,多くの地すべり地域では地下水の観測井戸を設けて,その水位の変化と,地面の移動状況を観測し,警報を出したりしています。また,急速に滑るものを「斜面崩壊」土砂と多量の水が混在して谷を流れ下るものを「土石流」と呼びますが,やはり多量の降雨が生じた場合に起こりやすく,斜面を構成している岩石などが脆弱で不安定な場合,雨量観測と過去の周辺の斜面崩壊や土石流の発生の状況から,その周辺の通行を遮断しています。山岳道路などで雨量規制されるのはこのような理由からです。その前兆として,斜面にひび割れが多数現れる,近くの川の水が濁ったり,流量が少なくなる,変な音や異臭がするといった現象がしばしば認められています。
広島の災害では残念なことに,時間100mmを超える集中豪雨をもたらした積乱雲の発達があまりにも急速であったこと,そのタイミングが夜中であったことが,避難警報が遅れた原因の一つとなっています。

Q. 地震で揺れやすいところと,揺れにくいところをある程度見分ける方法はありますか。
A. 講義でお話ししたように,「沖積層」と呼ばれる最も新しい軟弱な地層が分布するところは一般に揺れやすい場所です。大阪の上町台地以外の低平な場所は広く沖積層が広がっていますので,どこにいても良く揺れると考えておいてください。沖積層が広がっている箇所の多くは,水田として活用されています。もし,現在,宅地化している場合は,古い地形図を見てみましょう。国土地理院のホームページで地図・空中写真閲覧サービスを利用して過去の土地の様子を見ることができます。もしその場所が水田が広がっていたような地域は,地震の際に山地・丘陵・台地などの箇所に比べて揺れる地域だとみてよいとみられます。

Q. 大阪では地下街などが発達していますが,地震の時に地表より良く揺れるのでしょうか。
A. 地震時の揺れは,地上より相対的に地下の方が小さい場合が一般的です。しかし,地震の揺れが収まった後は,閉塞的な空間でもありますから,あわてずに,近くの出口から地上に出て,より安全な空間に避難した方が良いでしょう。

 


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