科学研究費助成事業 基盤研究(B)
地域変容に対応した避難行動要支援者のための
地区共助計画システムの構築に関する研究

研究概要

研究の学術的背景

■地域社会変容:

東日本大震災以降、あらたな防災条件(基準)下で防災・減災のあり方が見直されるなかで、人口減少や少子高齢化や都市施設の老朽化など都市や地域の異なる状況に応じた地区防災計画の検討が始まりつつある。 特に、地域ごとに異なる地形や気象などの条件把握のみならず、高齢者や障がい者の増加やその支援体制など、将来にわたる地域社会の変容によるコミュ ニティ・リスクに対して、住民が主体的に防災力を向上させる仕組みが求められる。

■避難行動要支援者の仕組み:

とりわけ、東日本大震災でも被害が集中した高齢者・障がい者や子ども、妊婦・幼児などの避難行動要支援者に むけた支援体制のあり方は、極めて重要な検討課題である。内閣府 2)は、「高齢者、障害者自身が 避難について考え、発災時又は発災のおそれが生じた場合、自らの身を守るための主体的な行動 ができる準備をし、加えて住民の助け合い(共助)による避難支援等の体制の構築が適切である。」 とし、さらに「防災に直接関係する取組だけでなく、普段から住民同士が顔の見える関係を築い て地域社会での孤立を防ぎ、避難行動要支援者自身が地域にとけ込むことができる様々な事業や ボランティアとの連携などの取組」を求めており、従来の防災体制では不十分で、地域のつなが りを回復させる新たな仕組みの必要性を示している。

■つながりの回復:

社会福祉協議会を中心にした新地域支援構想 3)では、「つながりの回復」には「情報共有」「協働体験」「拠点作り」「協議調整組織」の重要性を指摘し、それを実行するためのオープンなプラ ットフォームの構築を提言している。また、コミュニティ活動の先進的試みをしているオースト ラリアでは、安全性などを含む地域指標のコミュニティ・インジケータ 4)や、安全のための体験 型教育プログラムを提供する組織 5)があり、地域の質向上や安全教育に取り組んでいる。これか らの地域防災では、このような地域福祉や安全教育の取り組みを防災の観点から捉え直し、社会 実践することが極めて重要であり、特に地区ごとに特性や避難行動要支援者の状況に応じて柔軟 に計画し、適用できるようなシステムの構築が急務である。

 


■地区共助計画システム

地区共助計画システムとは、地域の「つながりの回復」にむけて、地域住民と福祉機関や消防、行政などの専門職が協働し、地域の共助の仕組みを計画・実践し、評価・改善する仕組みである。本研究では実際の小学校区を対象に地区共助計画システムを試行し、その有効性を検証することを目的としている。具体的には、全国および海外の先進事例調査をもとに、メルボルン大学 CIV(コミュニティ・インジケータ・ビクトリア)の研究協力を得ながら、大阪市立大学と行政区との連携協定を結びコミュニティ防災教育 を展開している小学校に、地域住民が日常的に訪れて触れあい、様々 な課題を共有できる拠点「地区共助プラットフォーム」を構築し、避難行動要支援者の避難に関 わるリスクの共有と体験のためのツールとして「コミュニティ・リスク・インジケータ」や「共 助体験プログラム」を開発し、約 1 年間の社会実験へて、その有効性と課題を明らかにする。本研究は3年間で【調査1】国内 1000 機関(自治体、消防)と 1000 福祉施設の郵送アンケー トと国内6例の現地訪問調査、【調査2】海外2例の現地訪問調査、【社会実験】2地域でリスク 共有と共助体験のプログラムを実施する。調査や実験の状況にあわせて定期的に専門家・住民等 を交えた検討会 18 回、公開研究会3回(最終回はシンポジウム)を開催する。それよって以下の 5点を明らかにし、成果は報告書にまとめ Website 公開する。

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